薄いクロスについて、

夜に照明をつけたら、壁や天井に、下地の凹凸が見えることがあります。

クロス仕上げの下地は石膏ボードになります。
要求する防火性能により、壁の場合は厚み12.5㎜、天井の場合は厚み12.5㎜もしくは9.5㎜を2重に張ります。
石膏ボードは建築材料として、防火性・防音性・金額の安さに優れており、住宅では多用されます。
最近では防音材として床下地材としても使用されます。


下地の石膏ボードは構造体に張りますが、構造体自体には、若干の反り・ねじれがあります。
石膏ボードのジョイント部分には微妙な段差があります。
それらの誤差をパテ処理し、見た目に平滑な1枚の面になるようにします。
仕上げは石膏ボードの上に、クロス張り、あるいはペンキ仕上げにします。

ここに問題が生じます。
クロス仕上げが厚みのあるクロス(発泡系など)の場合は、若干の誤差は吸収され、見た目にはわからなくなりますが、薄いクロスを使用した場合には、パテ処理の跡や、下地の段差が隠れずに、目立つ場合があります。

クロスの材料は、薄いものほど一般に金額は安いのですが、インテリアコーディネーターと色決めするときに、少し厚めのクロスを選択する方が、「逃げ」を取ることができます。
この「逃げ」という言葉は、建築の施工では重要な言葉になりますので、説明します。


建築に使用する材料で、まったく誤差のないものはありません。
また、職人が現場で施工するわけですから、必ず誤差が生じます。
工場生産品でも、現場よりは格段に良い条件ですが、誤差はゼロにはなりません。
建築では、材料と施工の両方に必ず、誤差が生じます。
その誤差には許容範囲があります。
許容範囲の中に納まるように、逃げをとるのです。
誤差を目立たせない配慮が必要です。


昼間の明るいところではまったく気付かないような微妙な誤差であっても、夜に照明をつけると、誤差が目立つ場合があります。
照明器具によるのですが、光が横から、壁・天井面にあたるような場合です。
現場では、「光が走る」という言い方をします。
経験豊かなインテリアコーディネーターですと、このあたりを配慮し、無難なクロスを選択しますが、「それは施工が悪いのでしょ」と取り合わない方もいます。
意地で薄いクロスばかり選択する方もいます。
人の問題になりますから、このようなインテリアコーディネーターにあたると、現場では苦労します。
次工程である、施工のことを考えることのできない人とは付き合わない方がよいと思います。

クロスの選択ひとつでも、色・柄だけではなく、総合的に判断できる技術的センスが必要です。
3現主義といわれる、現実に、現場で、現物の薄いクロスを使用して、張り上りの悪い状態を見て、そのような経験をしてこそ、初めてわかることです。

最終的には、建築主が満足するものでなければなりません。