小屋裏空間には、各構法により、多くの構造金物が取り付けられます。メンテナンス定期点検時に、小屋裏に上がると、火打金物や羽子板ボルト類の、ボルトのナットが緩んでいる場合がよくあります。入居者はナットの締め忘れと考えて、即欠陥住宅であると主張するひともいます。すべてのナットが均一に緩むわけでもないのですが、すぐに40℃以上になる小屋裏空間では、緩みは当然におこる現象といえます。
新築時の構造材の含水率は、20%以下という基準があります。現実は梁に丸太など大きな材を使用する場合、材の大きさから乾燥度合いは、もっと悪いはずです。集成材の場合には、比較的乾燥度合いはよいです。材木を放置すると、乾燥収縮がはじまり、材木の樹種にかかわらず“気乾状態”といって、14%前後で落ち着きます。材木には調湿作用があり、空気中の湿度の影響もありますが、20%の含水率が14%に低下するということは、ボルトのナットは緩むということを意味します。
ナットは上棟時に、大工がきつく締めますが、造作工程に進み、石膏ボードを張るころには、構造材の乾燥収縮により、少し緩みます。大工は、石膏ボードを張って隠れる前に、“ナットの増し締め”を行います。その後は、増し締めは行いませんが、入居して時間が経過すると、さらに乾燥収縮が進むために、少しナットは緩みます。
小屋裏空間など、ひとが入ることのできるところは、点検時に増し締め作業をすると完璧です。屋根の端部の軒先までは、高さがなく、入りにくいのですが、施工可能なところだけでも、増し締めすれば親切です。壁の中に隠れるホールダウン金物などのボルトもありますが、これは対処不能です。
“スプリングワッシャー”と呼ばれるものが開発されました。ナットにセットされている場合もあります。これをつけておくと、バネ効果で、ナットは手では回りません。レンチで回せば回るのですが、手で回らないだけで、何となく不安感が薄まります。ナットが少し緩むからといって、ナットがボルトから抜けるわけではないので、締め付け効果がなくなるわけではありません。
写真1 構造金物不足やナットの緩みを指摘
小屋裏空間は、人目につきにくいところであるため、大工も室内施工よりも、丁寧な施工を抜きがちになる。構造体は工事中にしっかり管理しなければならないところです。
写真2 トラブル事例の検証
トラブルになると、それぞれの立場の弁護士・1級建築士が現場を検証することになります。このような事態になることを想定しなかったことでしょう。多くの不具合点が表にでてきます。裁判所の調停に発展する場合もあります。
Comments