最近の建物では、庇(ひさし)がないことが多くなりました。庇は雨が当らないように、また太陽からの日射量の調整に役立ちます。意匠上ない方がよいと判断する設計者もいますが、本来は必要なものです。古い日本の住宅には、建物の耐久性を考えて、当然に設置されていました。
既製品の庇の問題は、雨漏りの原因となることと、外壁左官取合いのひび割れを誘発することです。雨漏りは、庇の形状によるものと、取り付け位置によるものと、取り付け方によるものがあります。
既製品の庇の形状について、庇の上部立ち上がりコーナーの板金が、一体化せずに、折り曲げただけという部材が流通していました。当然、庇コーナー部の防水テープの施工も、下葺き材の施工もうまくいきません。“ピンホール”ができた状態になりますから、雨漏りの可能性は高まります。
既製品の庇の取り付け位置について、入隅の庇専用の部材がありません。入隅には直角に立ち上がりが必要です。既製品は片方向だけの立ち上がりですから、他方向の立ち上がりがなく、現場で防水テープやシーリング材の施工により、納めていきます。適切な部材を現場に届けない限り、現場の職人任せになります。特別に施工手間をだして指示するなら、職人は納めますが、指示しないと、手間のかかることはしません。本来適切な部材がなければ、最初から現場施工で計画するべきです。優秀な職人で、かつコミュニケーションがとれている場合には、職人が事前に、監督と相談して納めます。事前に相談する職人は多くはありませんが、このような職人の現場では、雨漏りリスクは大きく下がります。
庇の取り付け方について、本体外壁取合い部の立ち上がり板金の上部に、75㎜幅(50㎜幅では少ない)両面防水テープを張り付けます。このときの押え方を充分に行います。防水テープの押え方が甘いと、下葺き材と一体化しません。その場合には、雨漏りの可能性が高まります。施工時期が冬場の場合、防水テープの粘着性が悪くなっていることもあります。その後に、下葺き材を施工して、防水テープと一体化します。外壁通気層には、若干の雨水や結露水が流れます。庇の板金・防水テープ・下葺き材の3つを一体化させることにより、雨漏りを防ぎます。したがって、施工には、押え付けることが重要となります。現場で見ていると、職人がかんたんに手で、少し押さえる程度という施工が多いのです。雨漏りリスクを認識していない職人、その指示を徹底指導しない監督、下請けにお任せする元請住宅会社など、体質から問題です。
外壁の左官取合いのひび割れについて、外壁がサイディングの場合には問題ありませんが、左官のときは、庇の材質が板金であり、押えると動きます。板金材料の熱による膨張収縮と、左官材料の乾燥収縮もあり、左官と板金の取合いが遊離して、隙間が生じ、浮きます。ひび割れが生じやすくなります。特別に問題ではないのですが、見栄えの悪さからクレーム化することが多いです。
写真:庇の立ち上がりコーナー部
庇を取り外すと、立ち上がりコーナー部が切れています。この部位の防水は大変です。伸縮性のある両面粘着防水テープ75㎜幅を使用して、丁寧に押さえつけます。庇本体を、両面防水水テープによって、外壁下葺き材と一体化させることにより、雨漏りを防止します。
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