建物の水平・垂直は重要となります。不同沈下などの問題が生じると、水平・垂直に不具合が生じて、建具の開閉がうまくいきません。床では、同じ方向にビー玉が転がります。
「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)では、平成12年4月1日以降に締結された新築住宅の取得契約(請負/売買)には、基本構造部分(柱や梁など住宅の構造耐力上主要な部分、雨水の浸入を防止する部分)について、10年間の瑕疵担保責任が義務づけられています。瑕疵(かし)とは欠陥を意味し、通常に期待される性能を欠くことです。つまり保証期間が10年ということです。
不同沈下の数値基準としては、表1を参考にします。品確法によると、3/1,000の傾きで、瑕疵の可能性があり、6/1,000の傾きで、瑕疵の可能性が高いと判断されます。メンテナンス担当者として、この数値は判断基準として、是非知っておく必要があります。多くの箇所で、レベルを測り、不同沈下の現状を把握することが先決です。
住宅現場では、施工は水平・垂直とも通常は1/1,000で管理します。1/1,000以内なら、施工誤差の範囲内との解釈です。最悪で、3/1,000以内です。裁判などの場合には、6/1,000が目安になります。出るところへ出たら、結構ゆるい基準になります。
これらの数値になると、竣工後に不同沈下が発生している場合が多いです。三半規管がおかしくなり、酔うような感覚になります。建具の開閉は正常でなくなります。レベル測定を定期的に実施し、経過観察も必要となります。不同沈下の進行の可能性もあり、話が大きくなり、通常のメンテナンスのレベルではなくなります。不同沈下を修正する工事を専門とする業者もあります。薬液注入やアンダーピニングなど、各種開発されています。現在以上に沈下しないようにまず地盤を固め、その後にかさ上げしますが、大変な工事になり、専門性も要求されます。
なお、1F床の不陸の場合には、3メートル以上の測定区間が必要ですが、傾斜ではなく、床束の高さ調整だけで済む場合もあります。
表48 傾斜と瑕疵
品確法第70条(技術的基準)
国土交通大臣は、指定住宅紛争処理機関による住宅に係る紛争の迅速かつ適正な解決に資するため、住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準を定めることができる。
建設省告示1653条(平成12年7月19日)による技術的基準として、
レベル 傾斜の程度 瑕疵の存する可能性
1 3/1000未満の勾配の傾斜 低い
2 3/1000以上、6/1000未満の勾配の傾斜 一定程度存する
3 6/1000以上の勾配の傾斜 高い
(ただし、沈下傾斜の測定区間は水平3m程度以上、垂直2m程度以上)
写真48 レベルで水平・垂直を調査中
住宅では、水平・垂直の精度が特に重要で、通常の誤差は1/1,000以内を原則とする。3/1,000未満の誤差で、瑕疵の可能性は低いとされている。メンテナンス担当者として、判断基準の数値を覚える。
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