バルコニー手摺壁の、笠木の板金のジョイントが問題となります。現場の寸法に合わせた長い材料はなく、3.6メートル程度の定尺物と呼ばれる、決まった寸法の材料を、ジョイントして使用します。建築では、ジョイントはいかなる場合でも問題となります。構造上の弱点でもあり、雨漏り上の弱点でもあります。デザイン上も嫌われ、見えないところにジョイントをもっていきます。しかしジョイントは必ず、発生するものです。
ジョイントに雨水が浸入しない配慮がされているなら、問題とならないのですが、単にフラットな捨て鉄板を入れただけ、単にジョイントにシーリングを入れただけという施工もあります。下葺き材の施工が完璧であれば、雨水は浸入しないのですが、これまた、すぐに見えなくなるところであり、現場では簡単に施工されがちです。見えるところだけを丁寧に施工するということもあります。雨漏りに関しては、この考え方は不可です。その場限りの施工で、職人や工事監督の人間性が疑われる施工です。次の工程の人が苦労することになり、信用失墜行為です。
メンテナンスの立場としては、できあがった現場であり、雨水の浸入口を補修することになります。この経験を前工程に、技術屋として、フィードバックして改善させたいところです。前工程にあたる工事監督は、ケチをつけられるという感覚で、メンテナンス担当者を嫌う場合もありますから、日ごろ良好な人間関係を築いておきたいところです。
新築工事中の現場では、工事監督が常駐しないため、職人任せの不具合仕事も見受けられます。建築系の人でなくても、現場で誰かが見ていたら、やらないでしょう。職人には、将来不具合が発生するであろうことは、わかっているはずです。職人として、多くの経験の中で、不具合の補修もおこなってきたわけです。職人によりますが、それでもやってしまうのです。
専門職の仕事の納めについては、工事監督・メンテナンス担当者よりも、職人が、現実に現場で現物を仕事しているわけですから、詳しいです。優秀な技術屋でも、職人として優秀な人を、自分のブレーンとして、よい関係に保っておく必要があります。職人はウデがよいだけでは駄目で、人間性の面でも、付き合えることのできる人でなければなりません。
写真47-1 笠木板金を外すと白蟻の被害
笠木板金から浸入した雨水は、下地の木材を腐食させ、腐朽菌・白蟻の被害になります。すべて現場の施工ミスが原因で、大きな損害になります。
写真47-2 笠木板金の継手不良
笠木板金の継手部分には、水返し加工のされていない捨て板金がありました。意味もなく、ただ入れただけの施工です。
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