犯罪の予防理論ですが、経験則から導き出されていますので、実社会において、様々な点で応用できます。例えば、人から見えにくい場所にある住宅で、1枚の割れた窓ガラスをそのまま放置しておくと、何がおきるでしょうか?いつも割れた状態の窓ガラスを見ていると、さらにもう1枚ガラスを割ろうとする人が増えてきます。割れている1枚のガラスが2枚になるだけのことで、罪悪感を感じていません。原因は、「この家は管理されていない」というシグナルが発信されていることになるからです。街行く人はそのシグナルを敏感に感じ取ってしまうのです。たった1枚のガラスでも割れたら、すぐに修繕しましょうという犯罪予防理論を、アメリカの犯罪心理学者ジョージ・ケリング博士が提唱しました。
この理論を実際に応用したのがニューヨーク市のジュリアーニ元市長です。ニューヨークの地下鉄車両はスプレーの落書きだらけでした。その落書きされた車両の、落書きを徹底的に消すことに取り組みました。「地下鉄はしっかりと管理されている」というシグナルを発信したことになります。その結果、わずか数年間で、殺人事件の数を67%も減少させる実績を作りました。治安が回復し、中心街も活気を取り戻しました。
地下鉄の落書きを徹底的に消すという取り組みが、何故、殺人事件の減少につながるのか?「管理している」というシグナルを発信したからです。結果として、犯罪都市ニューヨークを以前よりもはるかに安全な街にかえました。軽犯罪を取り締まることが凶悪犯罪の減少につながりました。
住宅現場でも、「この現場は管理されていない」というシグナルを発信するのではなく、「この現場はしっかりと管理されている」というシグナルを発信したいものです。品質・工期・安全に大きく影響を受けます。
(「写真マンガでわかる建築現場管理100ポイント」より抜粋)
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